養蜂産業振興会設立にあたって

代表理事 佐々木正己(玉川大学名誉教授)

 本振興会は、養蜂産業の発展と、それを支える蜜源や自然環境の保全・創生を図ることを目的としています。日本の養蜂を取り巻く環境はいま、ミツバチ自身の動態を含む自然環境、人間側の取り組みの双方において、大きな変革期にあるように思われます。

 蜜源環境の悪化、採蜜群とポリネーション群のバランス確保、蜂の健康問題、養蜂家の後継者問題、在来種ミツバチを中心とした趣味養蜂や都市養蜂の位置づけ、関連産業団体のあり方など、長期的な視野に立つと、取り組むべき課題は多岐にわたります。

 情報の収集ばかりか発信までもが、個人でインターネット上で出来る時代となり、紙媒体の雑誌やサーキュラーの発行は難しい時勢です。30年以上にわたり貴重な役割を果たしてきた玉川大学の’ミツバチ科学’誌も、現在新しい形を模索中です。養蜂振興法が改定され、ニホンミツバチを含む飼育届けの義務化はされましたが、転飼調整にはなお難しさがあり、日本蜂愛好団体については、どこにいくつあるのか全国規模での実情把握すら十分ではありません。

 しかしそうした中、オープンジャーナル形式の新しい学術誌の発刊(京都産業大学)があり、また昨秋(2017年11月)には多様な関連分野をカバーする大規模なミツバチサミットが開催されたりと、混沌とした状況を新しい形で整理しようとする動きも生まれつつあるように思われます。

 そんな流れの中で、私たちの活動も一定の役割を果たせることを願ってのスタートです。特に最近では、これからの養蜂を担う若い養蜂家の方たちが、積極的に行動されており、そうした方々の要望に幾らかでも応えられることを目指したいと思っています。

 会の維持運営に当てる以外の営利的なこと、まだ財政基盤もほとんどない身であり、基本的な考え方が近いミツバチ産業研究会(京都)とは、当分の間、緊密に関わり合いながら、歩んでいきたい考えです。小さな一歩、地道な活動であっても、養蜂と自然環境保全の将来にわたっての在るべき姿を、少し長い目で見据えながら活動できればと思っております。どうかよろしくお願いいたします。

2017年5月

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